sweet days

 

 

雪が舞う中で。待っていた彼の元にやっと辿り着く。

「すっげえ寒かった」
「しつこいな。俺だって精一杯急いだんだ」
「すっげえすっげえ寒かった」
「…仕方ねェだろ。車は故障して、電車も雪で遅れてたし」
「すっげえすっげえすっげえ…」
「……だから…」
「…心配した」
「あ?」
「携帯も持ってってなかっただろうがお前」
「ああ…急いでて忘れた」
「最初の一時間は仕事が押したんだろうと思った。次の一時間は、方向音痴だから迷ってんじゃねェかって。あとの一時間は事故かもしんねえって考えてた」
「……」
「心配してやったんだ」
「…悪かった」
「見てみろ、手も未だに冷たいし」
「コーヒーとかホットミルクとかでも作ってやろうか」
「てめェがかよ?笑かすな。派手に失敗する図が俺の頭で鮮烈に浮かんだぞ」
「家に着きゃ、暖房ガンガン効かせてやるし」
「家に着いて暖房つけてそれが効くまで、俺に凍えてろっての?」
「ちったあ辛抱して待てよ」
「そいつは無理な相談だ」
「てめェな…」
「三時間以上、我慢して待ってたんだぜ。これ以上は一分たりとも待てないね」
「どうしろってんだ」
「てめェのせいなんだから責任持って暖めやがれ。お前だって寒い癖に」
「生憎、走ってきて汗だくだ」
「汗がひく時って体が冷えるんだぜ」
「で?」
「抱きしめられてあげましょう、って言ってんだよ。Do you understand?」
「…そうしてほしいなら最初から言えよ」
「バーカ。俺はてめェの為を思ってだなあ」
「分かった分かった。──少しは暖まったか」
「まだまだ」
「確かに…冷えてんな。耳とか氷みてえ」
「当たり前だ。凍りつくかと思ったぜ」
「もういいか」
「まーだだよ」
「どうだ?」
「もうちょい」
「…おい…」
「ンだよ?」
「そろそろ、いいだろ。帰れなくなっちまう」
「今に始まった事じゃねェけど、無粋なヤツだなあ。てめェ、本当は嫌々やってんじゃねェの?」
「そんな事言ってねえだろ」
「じゃあ、何だよ。人目が気になるか?誰もいねェよ、こんな雪降ってんのに」
「このまんまだと、俺の方が我慢できなくなるからだ」
「…恥ずかしいヤツ。やっぱムードの欠片もねえ」
「何とでも言え」
「へえへえ。ま、少しは温もったしな。行くか」
「なあ、俺が来ないかもって選択肢はなかったのかよ」
「ん?ある訳ねェじゃん」
「えらく決め付けてんな」
「だってお前、俺の事メチャクチャ愛してるだろ。だから、死なねえ限りは来る筈だ」
「……っ」
「何絶句してんだよ」
「…自信満々だなと思っただけだ」
「何か間違ってたか?」
「否定はしねェ」
「正直なキミにはご褒美として…」
「粗品でもくれんのか」
「今夜一晩俺を進呈」
「豪華なんだか、単にあるもんで済まそうとしてるんだか…」
「要らねェんなら無理には勧めねェよ?」
「──いただきます」
彼に再び手を伸ばす。


- fin-
2003.2.3



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