恋は負けない

 

 

しかし困った。
何が困ったって、あの男だ。
ロロノア・ゾロと言う名の三刀流の剣士。
緑色の髪に三連ピアス。マリモマンって俺がつけてやった愛称はあまり気に入らねェようだが、ぴったりだと思うんだよな。芝生マンとどっちがいいか一度聞いてみるか。って今はそんな事ァどうでもいい。
強くなるのが趣味っつうか生甲斐の無愛想極まりない野郎で、それ以外は何にもないと思ってたんだが。
俺のことが好きなんだと。
あの男が。あの腹巻が。あの筋肉ダルマが。
何だかなあ。
俺ははっきり言って男なんかよりはレディの方がよっぽど好きなんだぜ。
ただ、この船に乗ってる女性は崇拝すべき存在で綺麗で可愛くて大好きだが、そういう対象にはならねェ。
だからって野郎同士で慰め合うなんて冗談話もいいとこだ。
それをまず叩きつけてやったら奴は、好きだと実にストレートな一言を投げ返してきて正直参った。
言わせてもらえばだ。俺が女性口説く時はもうちょっと色々時間かけて駆け引きを楽しむぜ。それも恋の醍醐味ってヤツだろ?
なのにあいつときたら、ムードもクソもねえ。いや、あんな奴にムードなんて求めちゃいねェけどな。
そりゃ、口で言うほど嫌ってる訳じゃねェよ。
歳が同じなのもあって何かっちゃぶつかるし粗暴で自己中心的な性格だが、悪い男じゃねェのは長く一緒に船で過ごしてきたから知っている。
奴が俺と、クルー以上の付き合いをしたがってるってのが問題なんだ。
告白に呆気に取られているうちにキスされて、それが意外と気持ち悪くなかったのはもっと大問題だったが。
そして。
キスだけじゃ済まなくなってきてんのが、俺の現在抱えてる最大級の…。
「おい、まだか」
いきなり背後で声がして俺は拭いてた皿を落としかけた。
「何だ、てめェ。急に来てビックリすんだろうが」
「さっきからいたぜ。てめェが独り言言ってて返事もしねェから」
ぐいと俺の腕を引っ張る。「片付けたんなら、こっちに来い」
「命令すんな、クソマリモ。まだ終わってねェんだよ」
「…あんまり待たせんな」
ぶつぶつ言いながら、頭を掻いている。
俺は殊更ゆっくり丁寧に食器を拭き、棚に収めた。
別にわざと焦らしてる訳じゃねえが、こいつがジリジリと餌を待っている動物じみた様子なのが気に入らねェな。
最後にテーブルを拭いてから煙草を一服。
カー、うめえ。
「いい加減にしろ、てめェ。ここでヤッちまうぞ」
苛々と俺の肩を掴む奴の腹に、膝を容赦なく入れてやった。呻いてやがる。ザマミロ。
「焦んな」
俺はギュッと灰皿に煙草を押しつけ、甲板へ出た。
あんな程度じゃ懲りねェんだろう、奴がのっそり後をついてくる。つうか、いつの間にか背中を押される形で格納庫に入っちまった。
「…どうしても、やんのかよ」
「当たり前だ。どれくらい待たされたと思ってる。そろそろ覚悟決めやがれ」
待たされたってお前、告白してから一週間も経ってねェぞ。まあ、この野郎は短気だからな…それでもすげえ待ったつもりなのかね。
奴は不愉快そうに唇を曲げた。
「お前に言うまでだって、結構考えた時期があったんだ」
…あっそ。
こいつのことだし、考えたっても二、三日とかかもしれねえがその辺は追求しないでやるか。
溜息をついて狭い格納庫の天井を見上げた時、奴が俺の腰を抱き寄せ唇を重ねてきた。
だからどうしてそういつも唐突なんだか、こいつはよ。
抗議するにも舌を絡められてしまい、何も言えない。ごつい手が体を弄るのは気持ち良くて、でも女の子に触られているのとはまったく違う感覚で。
「あ」
乳首を摘まれて不本意ながら思わず出た声に奴がニヤリとした。恥だ、くそ。
仕草そのものは荒々しい癖に、妙に執拗な愛撫が下半身まで下りてくる。
相手はゾロだってのに、レディなんかじゃねェのに。
「…っく…」
あああ、勃ったよ勃っちまったよ悪いかよ畜生。
しつこく擦られて堪えきれず出しそうになった時、もっと奥の方を触られて反射的に身を竦めた。
ゴツゴツした指が入ってくるだけならまだ違和感で済んだが、目の前の汗臭いマリモは当然それで終わる気はないらしく。
「痛ェ!」
指とは比べモンになんねェ。マジ痛え。
「まだ全然入ってねェぞ。我慢しろ」
「できるかっ。止めろ、中止!今日はここまでだ」
「アホ、それこそできるか!」
くそう、サカりやがって。
戦いとかなら外の傷だからまだ我慢できるが、これは全然違う。情けねェけど、未知の恐怖だ。
俺は悲痛な表情で叫んでみた。
「野蛮人!ケダモノ!頼むから止めてくれよ〜」
エーンエーン。エー…。
顔を両手で覆って指の隙間から覗くと、じっとりと奴が睨んでいる。
「嘘泣きならもっと上手くやれ、クソコック。てめェがそんな可愛い子ぶって通じるタマかよ」
…チッ。
こいつにゃ通用しねェか。迫真の演技だったのに。

「おい。そんなに、嫌か?」
う。
反則だって、お前は。そんな、ガキみてえに拗ねた顔すんな。俺の方が酷い事してるみたいだろうが。
「……嫌な訳じゃねえ」
俺は諦めて、緑の頭を掴んでキスをした。
仕方ねェな、もう。ジタバタしても始まらねえか。
──食わせてやるよ。


そりゃあもう、痛かった。真剣に涙が出るくらいだ。
けど、痛いだけでもなかったしお互い満足したんだろうから、結果オーライって感じかな。
服を身につけると、擦り寄ってきた奴に俺は言ってやる。
「次はてめェのケツ貸せ」
目を剥いたあいつの顔は笑えた。
単純馬鹿め。誰がてめェなんかに突っ込むかっての!
これぐらいは言っとかねェと、調子に乗るからだ。
やられっ放しじゃ俺らしくねェってもんさ。なあ?



-fin-

 

[TOP] 2003.3.14

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