ささやかにゾロ誕イラスト。ついでにmemoの走り書きSS&ラクガキ↓




親愛なるクソ剣士へ


摘んだ花束から一輪抜くと、ひとひらの花弁が舞い落ちた。

花、なんて。
おそらくこの世で最も似合わないと思っていた。
猛々しく、雄雄しく、受けた生の大半を戦いに費やしたこの男には。実際には存外、違和感がないものだと思う。
いつもは油断なく光っていた眼が閉じられたせいもあるかもしれない。
鋭角的な眉も通った鼻筋も凛々しい口元も見事にシンメトリーで、端正と言うには精悍だったが整った顔立ちではあった。
血塗れのその頬に、こめかみに、傷だらけの体に── そっと花を添えていく。
こんな送別の仕方は、決して望んでいなかっただろうが。

彼は飢えた獣のように最強だけを求めていた。
前へ進み続けた彼の背中を、ずっと密かに見つめていた。
そんな心情は、おくびにも出さなかった自信があるから。
なあ、お前は知らねェだろう。
俺はいつでも必死だったよ。
ほんの欠片でも想いを悟られないように。お前の負担にならないように。
馬鹿げた考えだと、己が一番知っていた。
告白したところで、状態は何も変わらないと本当は分かっていたのだ。
孤高の剣士を繋ぎ止める術を持たない、無力さを認めるには自分はプライドが高過ぎた。だからこそ、必要以上には近寄らず距離を保ってきた。
でも今日は正直になっても、いいよな?
心に秘めてきた言葉をかけても、魂のない骸はただ受け止め流してくれるだろう。


とりあえず。
好きだ、と言ってみた。
愛している、とも言ってみた。
言葉にしてしまうと、どうしてこうも軽いのかと思う。胸を抉る程に深くて優しいこの気持ちは、一言二言で片付けられるものでは到底ない。
ここまで自分の中に入り込んでおきながら、彼は覚めない眠りについてしまった。
一度も、こちらを振り返らずに。
それでも恨む気になれないのが不思議だ。


ロロノア・ゾロ。
俺は…お前という男に、会えて良かった。


──花に囲まれた剣士へ最後の別れを告げる為に顔を寄せると、唸り声に似た苦情が聞こえた。
「人を勝手に殺すなよ、アホコック」
「…生きてたのか」
「お前に好きだなんて言われちゃな。嬉しくて、おちおち死んでられねえだろ」
「もう黙れ。俺が恥ずかしさで死ぬ」



-fin-

 

 

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